答え - 読売の敗訴は 2016 年 6 月 28 日付で確定した
原辰徳の 1 億円問題を報じた週刊文春の記事をめぐり、読売巨人軍が発行元の文藝春秋を名誉毀損で訴えた裁判は、読売の敗訴で終わった。最高裁 第 3 小法廷は 2016 年 6 月 28 日付で球団の上告を受理しない決定をし、1 審と 2 審で球団の請求を退けた判決が確定した。
| 時期 | 段階 | 結果と判断の要点 |
|---|---|---|
| 2012 年 12 月 | 提訴 | 読売巨人軍が 3,000 万円の損害賠償と謝罪広告を求める |
| 2015 年 7 月 | 1 審 東京地裁 | 請求を棄却。報道に真実相当性を認める |
| 2015 年 12 月 | 2 審 東京高裁 | 控訴を棄却。記事の主要部分は真実、会見の説明は虚偽と推認 |
| 2016 年 6 月 28 日付 | 最高裁 第 3 小法廷 | 上告を受理せず、2 審判決が確定 |
確定した東京高裁の判決は、球団にとって 2 つの点で厳しいものだった。1 つは、読売の担当者が記者会見で虚偽の説明をしたと推認できるという点。もう 1 つは、記事の主要部分は真実だという点である (日刊スポーツ 2016 年 6 月 29 日)。訴えた側の説明が、裁判の中で疑われる形になった。
球団が求めた 3,000 万円の損害賠償と謝罪広告は、どちらも認められなかった。読売巨人軍の広報部は「事実誤認の甚だしい不当な判決が確定したのは極めて遺憾だ」とコメントした。この記事は、提訴から確定までの裁判の流れと、確定の後に球団と NPB が何を述べたかを整理する。
2012 年 6 月の報道と球団の対応
2012 年 6 月、週刊文春は、読売の監督だった原が 1988 年当時の女性問題をめぐり、2006 年に 1 億円を支払っていた経緯を報じた。文春は金銭を受け取った男性 2 人組を元暴力団員と報じ、朝日新聞も 2 人を元暴力団員と伝えたが、球団広報はこれを否定した。報道の中身と当時の球団の対応は原辰徳 1 億円問題の記事にまとめてある。
原は 6 月 20 日、1988 年の女性問題と 2006 年の金銭の支払いなど、記事の内容を大筋で認めてファンに謝罪した。支払いの相手については「プロ野球と関係ある人物」と述べた。
球団は原の謝罪と同時に出した文書で、2011 年に GM を解任されていた清武英利を情報の出どころと断定した。清武側は直後に「非常に残念でなりません。私は関知していません」とコメントし、これを否定した。解任に至る経緯は清武の乱の記事にある。
報道と球団の説明が食い違ったまま、球団は半年後、報じた側を法廷で訴える道を選んだ。2 人組が何者かという問いは、この裁判の中で、球団の説明が正しかったかという問いに置き換わっていく。
提訴と 1 審 - 東京地裁は球団の請求を棄却した
2012 年 12 月、読売巨人軍は文藝春秋を相手に、名誉毀損による 3,000 万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を起こした。原告は読売巨人軍だった。
2015 年 7 月、東京地裁は請求を棄却した。判決は「恐喝をした者を一般的な意味で反社会的勢力と考えるのは妥当だ」として、文春の報道に真実相当性を認めた (朝日新聞 2015 年 7 月 15 日)。真実相当性とは、書いた内容を真実と信じたことに相当の理由があったという判断で、名誉毀損の責任を負わない根拠になる。
球団はこの判決を不服として控訴した。謝罪広告まで求めた訴えが退けられても、球団は引かなかった。
2 審と最高裁 - 会見の説明は虚偽と推認された
2015 年 12 月、東京高裁は 1 審判決を支持し、球団の控訴を棄却した。日刊スポーツが引いた判決の要旨によれば、高裁は、読売の担当者が記者会見で虚偽の説明をしたと推認できるとし、記事の主要部分は真実だと判断した。
1 審は文春の報道に真実相当性を認めた。2 審は記事の主要部分を真実とし、球団の会見の説明を虚偽と推認できるとした。
球団は最高裁に上告したが、最高裁 第 3 小法廷 (木内道祥 裁判長) は 2016 年 6 月 28 日付で上告を受理しない決定をした。決定は 6 月 29 日までに判明し、球団敗訴の 2 審判決が確定した (日刊スポーツと産経新聞 2016 年 6 月 29 日)。1 審の棄却が確定したことで、3,000 万円の賠償も謝罪広告も認められずに終わった。
確定後の反応と NPB の線
確定を受けて、読売巨人軍 広報部は「事実誤認の甚だしい不当な判決が確定したのは極めて遺憾だ」とコメントした。文藝春秋は「記事の正当性を認めた当然の決定と受け止めている」とした (日刊スポーツ 2016 年 6 月 29 日)。
NPB の井原敦 事務局長は 6 月 30 日、2015 年 10 月に監督を退いていた原について、暴力団との金銭授受などを禁じた野球協約には抵触しないとの見方を示した。説明は「被害者という立場。暴力団員と認識せずに会ったものと理解している」というものだった。同じ記事は、暴力団員と知って金を渡した場合は野球協約違反になるという前提も伝えている (サンケイスポーツ 2016 年 7 月 1 日)。
2 審の判決から確定までの期間は、読売が野球賭博事件 (3 投手と高木京介の件) で制裁金を受けた 2015 年 11 月から 2016 年 3 月の時期と重なる。同じ時期に、球団は選手の賭博で制裁を受けながら、監督だった原の金銭問題では報じた側と法廷で争い続けていた。賭博事件の経緯は読売選手の野球賭博事件の記事にある。
球団は 2012 年 6 月の会見で 2 人組を反社会的勢力ではないと説明し、確定した高裁判決はその説明を虚偽と推認した。それでも球団は判決を「不当」と呼び、2012 年の説明を改めなかった。確定した高裁判決が虚偽と推認したのは記事ではなく球団自身の説明であり、それを自ら正さなかった点に、読売の説明責任の問題がある。NPB が判断したのは原個人が協約に触れるかどうかで、その線は暴力団員と知っていたかどうかに置かれた。この線では、球団の会見の説明が虚偽と推認されたことは問われない。
読み方と限界
この記事が書いた判決の内容は、新聞が引いた範囲によるもので、判決文そのものは確認していない。1 審は朝日新聞、2 審の要旨と最高裁の決定は日刊スポーツと産経新聞の記事による。1 審と 2 審の判決は、記事の日付から月までを書いた。2012 年 6 月の会見で球団の担当者が述べた言葉の字面も、この記事では扱っていない。
最高裁の決定は上告を受理しないというもので、最高裁が改めて事実を認めたわけではない。確定したのは東京高裁の判断であり、会見の説明を虚偽と推認したことと記事の主要部分を真実と認めたことはどちらも 2 審の判断、真実相当性は 1 審の判断である。
2 人組の素性は、文春と朝日新聞が元暴力団員と報じ、球団が否定したところまでが事実で、この記事は断定しない。原個人の評価もしない。原は 2015 年に監督を退いた後、2019 年に 3 度目の監督に就いた。