NPB ノーヒットノーラン全史 - 完全試合との違いと達成者の系譜

ノーヒットノーランの定義と記録

ノーヒットノーランは、先発投手が 1 試合を通じて相手チームに安打を 1 本も許さず、かつ無失点で完投した場合に記録される。四球失策による出塁は許されるが、安打は 1 本も許さないことが条件である。NPB では 1936 年の創設以来、通算 90 回以上のノーヒットノーランが達成されている。最多達成は沢村栄治と外木場義郎の 3 回。沢村は 1936 年、1937 年、1940 年に達成し、外木場は 1970 年、1971 年、1973 年に達成した。外木場の 3 回目は完全試合 (パーフェクトゲーム) であり、ノーヒットノーランの上位記録である。完全試合は安打だけでなく四球や失策による出塁も許さない、27 人の打者を全員アウトにする究極の記録で、NPB では 16 回達成されている。

歴史に残るノーヒットノーラン

NPB のノーヒットノーラン史には数多くの名場面がある。1950 年代には藤本英雄が日本プロ野球史上初の完全試合を達成した (1950 年 6 月 28 日)。1994 年の槙原寛己 (読売) の完全試合は、テレビ中継で全国に放映され、大きな反響を呼んだ。2012 年には杉内俊哉 (ソフトバンク) がノーヒットノーランを達成し、2022 年には佐々木朗希 (ロッテ) が 20 歳で完全試合を達成した。佐々木の完全試合は 19 奪三振、13 者連続三振という NPB 新記録を伴うもので、「令和の怪物」の名を不動のものとした。一方、9 回 2 アウトまでノーヒットに抑えながら最後の打者に安打を許す「幻のノーヒットノーラン」も数多く記録されており、達成の難しさを物語っている。

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ノーヒットノーラン達成の条件

ノーヒットノーランを達成するには、投手の実力だけでなく、いくつかの条件が揃う必要がある。まず、投手のコンディションが最高の状態であること。球速変化球のキレ、制球力のすべてが高いレベルで揃わなければならない。次に、守備陣の好守が不可欠である。際どい打球を野手が好捕することで、安打を防ぐ場面は必ず発生する。さらに、審判のストライクゾーンも影響する。広めのゾーンであれば投手有利となり、ノーヒットノーランの可能性が高まる。統計的には、ノーヒットノーランは約 3,000 試合に 1 回の割合で発生する。NPB のシーズン総試合数が約 860 試合であることを考えると、3〜4 年に 1 回程度の頻度で達成される計算になる。

2020 年代のノーヒットノーランと完投減少の影響

2020 年代の NPB では、先発投手の投球回数が減少傾向にあり、完投自体が稀になっている。ノーヒットノーランは完投が前提であるため、達成の機会は減少している。2020 年代に入ってからは、佐々木朗希の完全試合 (2022 年) が唯一の達成例であり、ノーヒットノーランの希少性はさらに高まっている。一方で、複数投手による「継投ノーヒットノーラン」は公式記録としては認められていないが、実質的に相手に安打を許さない試合は増えている。今後、投手の分業制がさらに進めば、「1 人の投手によるノーヒットノーラン」はますます困難になるだろう。それだけに、達成された際の価値と感動は、これまで以上に大きなものとなる。

パ・リーグとセ・リーグの達成数比較

NPB のノーヒットノーラン達成数をリーグ別に見ると、セ・リーグとパ・リーグの間に顕著な差は見られない。両リーグともに通算 40 回以上の達成が記録されている。ただし時代ごとの傾向には違いがある。1950 年代から 1970 年代にかけてはパ・リーグの達成例が多く、特に 1960 年代後半から 1970 年代前半にかけて外木場義郎や鈴木啓示らが相次いで達成した。一方、セ・リーグでは読売の投手陣が複数回達成しており、沢村栄治の 3 回は NPB 最多タイ記録である。DH 制を採用するパ・リーグでは投手が打席に立たないため、投手の負担は軽いが、打線に切れ目がないという特徴がある。セ・リーグでは投手自身が打席に立っていた時代があり、その分相手打線に弱点が生まれやすかった。リーグ制度の違いが達成難易度に影響を与えている。

ノーヒットノーランと球場の関係

ノーヒットノーランの達成には球場の特性も影響する。投手有利な球場 (投手パーク) ではフライが外野に収まりやすく、長打が出にくいため達成の可能性が高まる。東京ドームは天井が低く打球が伸びにくいとされ、甲子園球場は浜風がライト方向の打球を押し戻すことで知られる。一方、明治神宮球場は両翼が狭く、打者有利な環境とされる。統計的に見ると、広い外野フェンスを持つ球場での達成例が多い傾向がある。また、マウンドの硬さや傾斜角度も投手のパフォーマンスに影響を与える。各球場のマウンド整備は専門のグラウンドキーパーが担当しており、投手によってはマウンドとの相性が成績を左右するケースもある。球場の環境要因は単独では決定打にならないが、投手のコンディションと組み合わさることで達成確率を上下させる重要な要素である。

ノーヒットノーランの国際比較

ノーヒットノーランは NPB だけでなく MLB や KBO (韓国プロ野球) でも記録される。MLB では 1880 年代から 300 回以上の達成例があり、NPB の 90 回以上を大きく上回る。これは MLB の歴史が長く、試合数が年間 2,430 試合 (30 球団) と NPB の約 3 倍であることが主因である。一方 KBO では 1982 年のリーグ創設以来 40 回以上が記録されている。各リーグの打高投低・投高打低の時代によって達成頻度は変動する。MLB では 2010 年代に達成が増加した一方、2020 年代には減少に転じた。NPB と MLB に共通する傾向として、投手の分業制が進むほど単独投手による達成が困難になる点が挙げられる。完投そのものの減少は世界的な流れであり、ノーヒットノーランの希少価値は各国共通で高まっている。