答え - 逮捕から復帰要請の報道までの 4 か月半
読売の監督だった阿部慎之助は、2026 年 5 月 25 日に暴行の疑いで警視庁に現行犯逮捕された。翌 26 日に釈放されると球団に辞表を出し、球団はその日のうちに受理した。シーズン途中の監督の退団は、球団の歴史で初めてである。6 月 15 日、東京地検は阿部を不起訴 (起訴猶予) とした。そして 10 月 11 日、球団が阿部に復帰を要請していると報じられた。
球団の初動は速かった。逮捕の夜に球団社長が「進退を含め処分を検討」すると発表し、翌日には辞表を受理して監督代行を置いた。一方で、不起訴から約 4 か月での復帰要請について、球団はその理由を公に説明していない。経過は次の表のとおりである。
| 日付 | 出来事 | 球団の対応 |
|---|---|---|
| 5 月 25 日 | 暴行の疑いで現行犯逮捕 | 社長のコメントを発表 |
| 5 月 26 日 | 釈放、辞表を提出 | 辞表を受理、監督代行を置く |
| 5 月 26〜28 日 | 復帰を願う署名 13 万筆 | 発表なし |
| 6 月 9 日 | 書類送検 | 発表なし |
| 6 月 15 日 | 不起訴 (起訴猶予) | 発表なし |
| 9 月 | オーナーが阿部について問われる | 雑音を届けたくないと発言 |
| 10 月 11 日 | 復帰要請が報じられる | 発表なし |
| 10 月 22 日 | 監督不在でドラフト会議 | 監督は決まらず |
| 10 月 23 日 | 後任に松井秀喜と報じられる | 報道の段階 |
逮捕の夜 - 110 番から球団社長のコメントまで
捜査関係者によると、容疑は東京都渋谷区の自宅で長女に暴行を加えた疑いである。5 月 25 日午後 7 時 10 分ごろ、児童相談所が「父親から暴行を受けた」と 110 番した。長女は生成 AI の ChatGPT に相談し、その回答を受けて児童相談所に通報していた (日本テレビ 2026 年 5 月 26 日)。
同じく捜査関係者によると、阿部は容疑を認め、「姉妹でけんかしているところを静かにしろと言ったら、言い返してきたのでかっとなった」と供述した。けがは確認されておらず、球団の発表でも長女にけがは無い。阿部は 26 日未明に渋谷署から釈放され、在宅で捜査を受けることになった (スポーツニッポン 2026 年 5 月 26 日)。
球団は逮捕の夜、国松徹 球団社長のコメントを発表した。「暴力は許されないことで極めて深刻に受け止めています。交流戦前夜に重大な不祥事を起こし、全てのプロ野球関係者とファンの皆さまに謝罪します。阿部慎之助監督については進退を含め処分を検討します。明日 (26 日) 以降は橋上秀樹オフェンスチーフコーチに監督代行を務めてもらいます」。
阿部は 2001 年から読売で 19 年プレーした捕手で、キャプテンも務めた (キャプテン制度の変遷の記事)。2024 年に一軍の監督になって 1 年目でリーグ優勝し、3 年目のチームは 46 試合を終えて 24 勝 22 敗の 3 位だった。
辞任の会見 - 一夜明けた辞表の受理と監督代行
5 月 26 日、阿部は球団に辞表を提出し、受理された。会見では、「私の家族のトラブルで多くの野球ファンの方、プロ野球関係者の方、会社に多大なご心配とご迷惑をかけました。そして伝統ある巨人軍という監督の名も汚してしまって、とても深く謝罪したい気持ちでいっぱいでございます」「本当に申し訳ありませんでした」と述べた。チームへの思いを問われると「いやぁ…」と絶句し、「こういう形で去ることは…本当にご迷惑をかけているなと思います」と涙を流した (日本テレビと日刊スポーツ 2026 年 5 月 26 日)。
会見では長女の手紙も読み上げられた。手紙は、ChatGPT の案内で匿名で相談できる児童相談所に電話したと説明し、「どうしたらいいかといった私自身の意向が聞かれることはなく、警察に通報されるという形になってしまいました」と書いていた (日本テレビ 2026 年 5 月 26 日)。
26 日の夜、東京ドームでは阿部監督の旗が撤去された。その日の交流戦の初戦から、橋上秀樹 オフェンスチーフコーチが監督代行として指揮を執った。
署名と不起訴 - 13 万筆の署名と起訴猶予
辞任の 26 日、「阿部慎之助氏復帰を願う会」が署名サイト Change.org で署名を始めた。最終目標の 4 万 3,500 筆は開始から約 24 時間で超え、28 日までに 13 万筆を超えて受け付けを終えた (日刊スポーツ 2026 年 5 月 29 日)。署名は要望書とともに球団に提出された (AERA DIGITAL 2026 年 10 月 15 日)。
会は「今は早い」「そっとしておくべきではないか」「暴力を肯定する活動なのではないか」「被害者側への配慮が足りない」という批判を受けたと明かし、「私たち自身、暴力や不適切な行為そのものを肯定する考えは一切ありません」と書いた。
阿部は 6 月 9 日に書類送検され、6 月 15 日に東京地検が不起訴 (起訴猶予) とした (時事通信 2026 年 6 月 15 日)。被疑事実の要旨は、渋谷区の自宅で長女の胸ぐら付近を手でつかみ、押し倒すなどの暴行を加えた、というものだった。起訴猶予は起訴しない処分で、有罪か無罪かの判断ではない。
阿部は代理人を通じて、「今回のことは、ひとえに私自身の未熟さによるもので、全ての非は私にあります。大切な家族に大きな負担をかけることになり、後悔の念しかありませんし、日々、失ったものの大きさを感じ、猛省しております」とコメントした (日刊スポーツ 2026 年 6 月 15 日)。
復帰要請の報道 - 2 位で終えたシーズンの後に
チームは橋上監督代行の下でシーズン最終戦まで優勝を争い、阪神に敗れて 2 位だった。クライマックスシリーズのファーストステージでは 3 位の DeNA に 2 連敗した。監督としての阿部の若手の起用は、読売の FA 問題の記事が扱っている。
9 月、山口寿一 オーナーは阿部について問われ、「残り 12 試合で優勝がかかっているという状況で、一切の雑音はグラウンドや試合、チームに届けたくない。私の立場で言えるのはそれだけですけどね」と答えていた。日刊スポーツは 10 月 11 日、球団が阿部に球団への復帰を要請していることが分かったと報じ、編成部門の役職が有力候補だとした。これは報道であり、球団の発表ではない。
AERA DIGITAL (2026 年 10 月 15 日) は、この報道に対する SNS の批判として「一般社会ならこんな早く復帰することは考えられない」「生え抜きのスターだから球団に守られているなと感じる」を載せたが、記事の全体は復帰反対の一色ではない。日刊ゲンダイ (2026 年 10 月 16 日) は、編成の要職への登用を疑問視する匿名の球団 OB の声を載せた。
読売が監督不在でドラフト会議に臨むのは 2015 年以来だった (日刊スポーツ 2026 年 10 月 21 日)。監督が決まらないままドラフト会議を迎えた翌日の 10 月 23 日、後任の監督に松井秀喜が就くと報じられた。
二軍監督時代の罰走 - 2020 年 3 月 22 日の練習試合
2020 年 3 月 22 日、阿部が率いる読売の二軍は早稲田大学との練習試合に 6 対 9 で負け、阿部は選手に罰走を命じた。NEWS ポストセブン (2020 年 5 月 22 日) が載せたスポーツ紙デスクの談話は、その中身を「全員に外野両翼のポール間ダッシュを 10 本、この日登板した投手は 5 本追加で計 15 本走らせました。このオフから就任した阿部監督は、“二軍は軍隊式野球をやる”と宣言していました」と伝えている。
同じ談話によると、ファンの声は「時代にそぐわない」「パワハラだ」という批判と、「アマチュア、しかも大学生に負けたのだから当然だ」という声に分かれた。ポストセブンは、ダルビッシュ有 (当時 カブス) の SNS の投稿も論争を広げたと書いた。3 月 23 日の投稿は日本ハムの例を挙げ、「球団首脳にも理解があったから 2005 年にはすでに日本ハムには無駄なランニングがなかった。」と書いていた (PRESIDENT Online 2020 年 5 月 13 日)。
見解 - 速い初動と、理由の説明が無い復帰要請
初動の速さと対照的なのが復帰要請である。不起訴から約 4 か月、逮捕から 5 か月に満たない 10 月に復帰要請が報じられたが、球団はその理由を公に説明していない。SNS の批判は、一般社会と比べて早すぎるという点と、生え抜きのスターだから守られているという点に集まった。不起訴 (起訴猶予) は有罪か無罪かの判断ではない。球団の説明が無いため、どちらの批判にも答えが示されていない。
球団は 5 月に辞表を受理し、山口オーナーは 9 月に雑音をチームに届けたくないと答え、13 万筆の署名が提出された後の 10 月に復帰要請が報じられた。署名が判断の材料になったかどうかも含め、この並びの意味を球団は語っていない。
2022 年の坂本勇人の報道では、球団の処分も説明も発表されなかった (坂本勇人の記事)。阿部の件では辞表を一夜で受理した。球団が何を基準に選手と監督の進退を決めているのかは、外からは見えない。
読み方と限界
この記事の事実は、スポーツニッポン、日本テレビ、日刊スポーツ、時事通信の記事本文による。AERA DIGITAL、日刊ゲンダイ、NEWS ポストセブン、PRESIDENT Online の記述は、各媒体が書いたことと載せた声として扱った。暴行の中身は、被疑事実の要旨と本人の供述の範囲にとどめた。
この記事は阿部の行為を評価しない。長女の情報は書いていない。復帰要請と後任の監督は報道の段階のもので、球団の発表は確認していない。2020 年の罰走は指導の方針をめぐる別の話で、2026 年の件の原因や背景として書いたものではない。