プロ野球選手は試合中「ほとんど左を向いている」- 右打席・一塁方向・反時計回りの構造

右打者は「左を向いて」構えている

NPB の打者の約 6〜7 割は右打者である。右打者は打席に立つとき、体の左側を投手に向けて構える。つまり、顔は左方向 (三塁側) を向いている。打席に入るたびに左を向き、投球を待ち、スイングする。1 試合で 4 回打席に立つとして、各打席で数分間左を向いている。左打者は逆に右を向くが、右打者が多数派であるため、打席全体で見ると「左を向いている時間」の方が長い。テレビ中継でバッターボックスが映るとき、右打者の顔は常にカメラ (バックスクリーン方向) に向いている。視聴者が見慣れた「打者の顔」は、実は左を向いた顔なのである。

走塁は反時計回り - 常に左に曲がる

野球の走塁は、一塁→二塁→三塁→本塁と反時計回りに進む。走者は常に左方向に曲がりながら走る。なぜ反時計回りなのか。これは右打者が打った後に一塁に走る動線に由来する。右打者はスイングの後、体が自然に一塁方向 (右方向) に回転する。この回転の勢いを活かして一塁に走り出すと、その後の走塁は反時計回りになる。もし時計回り (三塁方向に走る) だとすると、右打者はスイング後に体の回転を逆方向に切り替える必要があり、不自然な動きになる。反時計回りの走塁は、右打者が多数派であることを前提とした設計なのである。そして反時計回りに走るということは、走者は常に左肩を内側 (ダイヤモンドの中心方向) に向けて走っている。

守備側も左を向く場面が多い

守備側の選手も、左を向いている時間が意外に長い。内野手は打球に備えて本塁方向を向いているが、右打者の打球は引っ張り方向 (三塁側、つまり内野手から見て左方向) に飛ぶことが多い。遊撃手や三塁手は、打球を追って左方向に動くケースが頻繁にある。外野手も同様で、右打者の引っ張った打球を追う左翼手は、打球を追いながら左方向に走ることが多い。投手はセットポジションで一塁走者を警戒するとき、左肩越しに一塁方向 (左方向) を確認する。捕手だけは例外で、投手方向 (正面) を向いている時間が最も長い。しかし、盗塁阻止の送球では二塁方向 (左方向) に体を回転させる。

球場の設計も「左向き」を前提にしている

野球場の設計にも「左向き」の構造が組み込まれている。公式ルールでは、本塁から投手方向を東北東に向けることが推奨されている。これは午後の試合で太陽が打者の目に入らないようにするための配慮だが、結果として一塁側 (右方向) が南、三塁側 (左方向) が北になる。右打者が左を向いて構えるとき、太陽は背中側にある。テレビ中継のカメラはバックスクリーン付近 (センター方向) に設置されるため、右打者の顔が正面から映る。この配置は、右打者が多数派であることを前提とした設計である。球場全体が「右打者が左を向いて打つ」ことを基準に設計されているのだ。

左利きの選手は「右を向く」少数派

左打者は右を向いて構えるため、この「左向きの法則」の例外となる。しかし、左打者は NPB 全体の約 3〜4 割であり、少数派である。さらに興味深いのは、左投手の存在である。左投手はセットポジションで一塁走者を正面に見ることができるため、牽制球が投げやすい。これは右投手が左肩越しに一塁を確認しなければならないのとは対照的である。左投手にとって、野球のフィールドは「右向き」に設計されているとも言える。左利きの選手は、右利き中心に設計された野球のフィールドの中で、独自の優位性と不利を持っている。

野球は「右利きが左を向くスポーツ」である

野球の構造を整理すると、一つの結論に行き着く。野球は「右利きの選手が左を向いてプレーするスポーツ」なのである。右打者は左を向いて打ち、走者は左に曲がりながら走り、右投手は左肩越しに走者を確認する。この「左向き」の構造は、意図的に設計されたものではなく、右利きが多数派である人間社会の反映である。もし人類の多数派が左利きだったら、野球は時計回りの走塁で、打者は右を向いて構えるスポーツになっていたかもしれない。野球のフィールドは、人間の身体の非対称性を映す鏡なのだ。次に野球を見るとき、選手たちが「左を向いている」ことに注目してみてほしい。一度気づくと、もう気にならずにはいられなくなる。