概要
延長戦は、9 回終了時点で両チームの得点が同じ場合に行われる追加のイニングである。NPB の一軍公式戦では延長は 12 回までとされており、12 回終了時点でも同点の場合は引き分けとなる。この 12 回打ち切りと引き分けは公認野球規則そのものの定めではなく、規則が所属団体の規定に委ねている部分を NPB が取り決めたものである (次節)。引き分けは MLB では記録として残ることがほとんどない決着で、勝敗のどちらにも数えないためペナントレースの順位争いにも影響する。延長回は救援投手をつないで戦うのが通例で、どの投手を残せているかが采配の分かれ目になる。COVID-19 下の特例として、NPB では 2020 年は延長 10 回まで、2021 年は延長なし (9 回打ち切り) が採用され、2022 年に従来の延長 12 回制へ戻った。タイブレーク (延長回の開始時に走者を二塁に置く方式) をめぐる規則の状況は後述するが、2026 年 8 月時点の NPB 一軍公式戦は従来の延長 12 回制のままである。
12 回打ち切りと引き分けの根拠
延長を何回まで行うかは、公認野球規則そのものには書かれていない。規則 7.01 (b) は、両チームが 9 回の攻撃を完了してなお得点が等しいときは「さらに回数を重ねていき」、延長回の表裏を終わってビジティングチームの得点がホームチームの得点より多い場合、またはホームチームが延長回の裏の攻撃中に決勝点を記録した場合に試合が終了すると定めるだけで、上限の回数には触れていない。同 (d) は、正式試合が両チームの得点が等しいまま終了した場合をサスペンデッドゲーム (後日の再開試合) とし、そこに【注】「我が国では、所属する団体の規定に従う。」を添えている。つまり同点をどう決着させるかは規則本体ではなく所属団体の取り決めに委ねられており、NPB の一軍公式戦が 12 回で打ち切って引き分けとするのは、その取り決めにあたる。MLB で引き分けが記録として残ることがほとんどないのは、規則本体どおり同点で終わった試合を後日再開する扱いをとっているからである。引き分けを残すリーグは NPB だけではなく、韓国の KBO リーグも延長に上限を置いて引き分けを認めており、2025 年からはピッチクロック導入に伴う投手の負担を考えて上限を 12 回から 11 回へ短縮した。
タイブレークと延長回の規定
タイブレークは MLB が 2020 年に暫定導入し、2023 年に正式ルール化した方式で、日本の公認野球規則にも 2024 年度の改正で条文として入った。改正では 7.01 (b) の見出しが「延長回」となり、同 (2) として「9回が完了した後、10回以降は、走者二塁から」始めることが加えられた。延長回の先頭打者は前の回からの継続打順とし、二塁走者はその回の先頭打者の前の打順のプレーヤーが務める (その打順が投手であれば、さらに前の打順のプレーヤーが代わりに務めることができる)。投手の自責点を決めるうえではこの走者は失策で二塁に到達したものとみなすが、チームやプレーヤーに失策は記録しない。延長回が始まるたびに球審が攻撃側の打順表を確認する手順も定められている。ただしこの (2) にも【注】「我が国では、所属する団体の規定に従う。」が付されており、採用するかどうかは団体ごとの判断である。NPB の一軍公式戦は採用しておらず、2026 年 8 月時点でも 12 回打ち切りと引き分けのままである。延長回の投手運用については 2025 年度の改正が触れており、投手交代を伴わないでマウンドへ行ける回数は 9 イニングにつき 1 チーム 4 回までで、延長回に入ってからは 1 イニングにつき 1 回とされている。