エスコンフィールドの衝撃
2023 年に開業した日本ハムの新本拠地エスコンフィールド北海道は、NPB の球場建築に革命をもたらした。総工費約 600 億円、収容人数約 35000 人のこの球場は、開閉式屋根、天然芝、左右非対称のフィールド形状という NPB では珍しい特徴を持つ。最大の革新は「ボールパーク構想」である。球場周辺にホテル、温泉、レストラン、ショッピングモール、キャンプ場を配置し、試合のない日も人が集まる複合施設として設計された。開業初年度の来場者数は約 300 万人で、うち試合観戦者は約 200 万人、残りの 100 万人は球場周辺施設の利用者だった。MLB のトゥルーイスト・パーク (アトランタ) の「ザ・バッテリー」構想を参考にしたとされる。
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NPB 球場の世代交代
NPB の球場は大きく 3 世代に分類できる。第 1 世代は 1950〜70 年代に建設された球場で、甲子園球場 (1924 年) や神宮球場 (1926 年) が代表格である。第 2 世代は 1990 年代のドーム球場ブームで建設された東京ドーム (1988 年)、福岡ドーム (1993 年)、大阪ドーム (1997 年) などである。第 3 世代がエスコンフィールドに代表される「ボールパーク型」球場で、試合観戦だけでなく総合的なエンターテインメント体験を提供する。神宮球場は 2028 年頃の建て替えが計画されており、ヤクルトの新本拠地は第 3 世代の設計思想を取り入れると予想されている。
天然芝と人工芝の論争
球場の芝の選択は選手のパフォーマンスと健康に直結する。NPB の 12 球場のうち、天然芝を採用しているのはマツダスタジアム (広島)、楽天モバイルパーク宮城、エスコンフィールド北海道など少数派である。大半のドーム球場は人工芝を使用しているが、人工芝は選手の膝や腰への負担が大きいとされる。MLB では 30 球場中 28 球場が天然芝を採用しており、NPB との差は歴然である。ソフトバンクの PayPay ドームは 2024 年に人工芝を最新世代に張り替え、天然芝に近い感触と衝撃吸収性を実現した。天然芝への全面移行は維持コストの問題から容易ではないが、選手の健康を重視する流れは今後も強まるだろう。
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球場建築の未来像
NPB の球場建築は今後も進化を続ける。注目されるのは、テクノロジーの統合である。エスコンフィールドでは顔認証による入場システム、座席からのフードオーダーアプリ、AR を活用した観戦体験が導入されている。DeNA は横浜スタジアムの段階的改修を進め、VIP エリアの拡充やデジタルサイネージの大型化を実施した。将来的には、5G 通信を活用したマルチアングル映像配信や、座席ごとにカスタマイズされた情報表示など、パーソナライズされた観戦体験が実現する可能性がある。球場は「試合を見る場所」から「体験を楽しむ場所」へと変貌を遂げつつあり、この変化が NPB の観客動員と収益を次のレベルに引き上げる鍵となる。