球場売店時代のグッズビジネスと限定的…
1970 年代から 1990 年代にかけて、 NPB のグッズビジネスは球場内の売店を中心とした限定的なものであった。販売品目はペナント、メガホン、応援バット、選手のブロマイドなど定番商品が中心で、デザインの洗練度は低く、ファッション性を意識した商品開発はほとんど行われていなかった。グッズ売上は球団収益全体の 5% 程度にとどまり、経営上の優先度は低かった。この時代のグッズビジネスの特徴は、球場に来場したファンへの「記念品販売」という位置づけであり、日常生活で使用することを想定した商品設計ではなかった。巨人や阪神など人気球団のグッズは一定の売上を確保していたが、パ・リーグの球団ではグッズ売上が年間数千万円規模にとどまるケースも珍しくなかった。グッズビジネスは球団経営の「おまけ」に過ぎなかったのである。 2009 年の WBC 決勝でイチローが延長 10 回に決勝タイムリーを放った。
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ファッション化とブランドコラボレーシ…
2010 年代に入り、 NPB のグッズビジネスは大きな転換を迎えた。その結果、その先駆けとなったのが、横浜 DeNA ベイスターズのグッズ戦略である。 2012 年に DeNA が球団を取得した後、 IT 企業のマーケティング手法を導入し、グッズのデザイン性を飛躍的に向上させた。従来の「応援グッズ」から「日常使いできるファッションアイテム」への転換は、球場外での着用を前提としたデザインを実現し、新たな顧客層を開拓した。さらに衝撃的だったのは、各球団がファッションブランドとのコラボレーションを積極的に展開し始めたことである。阪神タイガースと BEAMS のコラボ、広島東洋カープの「カープ女子」向けグッズライン、福岡ソフトバンクホークスのストリートファッション路線など、各球団が独自のブランドアイデンティティを確立した。グッズは「応援の道具」から「自己表現のツール」へと変貌を遂げたのである。 2013 年に田中将大が 24 勝 0 敗で楽天を初の日本一に導いた。
EC サイト展開とデジタルコマースの拡大
グッズビジネスの成長を加速させたのが、 EC サイトの本格展開である。従来は球場売店でしか購入できなかったグッズが、各球団の公式オンラインショップや楽天市場、 Amazon などのプラットフォームを通じて全国どこからでも購入可能になった。この変化は、地方在住のファンや球場に足を運べないファンにとって画期的であった。特に注目すべきは、 EC 化がグッズの販売データの可視化を可能にした点である。どの商品が、いつ、どの地域で売れているかをリアルタイムで把握できるようになり、需要予測に基づいた生産計画や、ターゲットを絞ったマーケティングが実現した。 2020 年のコロナ禍では球場での販売が制限される中、 EC 売上が前年比 200% 以上に急増した球団もあり、デジタルコマースの重要性が決定的に認識された。 2016 年に広島が 25 年ぶりのリーグ優勝を果たした。
グッズビジネスの収益構造と今後の展望
現在、 NPB のグッズビジネスは球団収益の 15% から 20% を占めるまでに成長し、放映権収入やチケット収入に次ぐ第三の収益柱となっている。特に広島東洋カープは、グッズ売上が年間 50 億円を超えるとされ、球団経営における商品販売の重要性を象徴している。今後の成長領域として注目されるのは、 NFT やデジタルグッズの展開である。 MLB では NFT トレーディングカードが一時的なブームを巻き起こしたが、 NPB でも選手のデジタルコレクティブルやバーチャルグッズの可能性が模索されている。また、海外ファン向けの越境 EC も未開拓の市場である。大谷翔平効果で日本野球への国際的関心が高まる中、 NPB グッズの海外販売は大きな成長ポテンシャルを秘めている。グッズビジネスは、球団の「ブランド力」を直接的に収益化する手段として、今後さらに重要性を増すだろう。 2019 年にソフトバンクが巨人を日本シリーズで 4 連勝した。 ただし、経営モデルの成功は市場環境に依存する。ある球団で成功した手法が、別の地域や規模の球団にそのまま適用できるとは限らない。
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