ブルペンデーが生まれた背景
ブルペンデーとは、先発投手を立てずにリリーフ投手のリレーで 9 イニングを乗り切る戦術である。MLB では 2018 年にタンパベイ・レイズがセルジオ・ロモをオープナーとして起用したことで注目を集めた。オープナーとは、通常リリーフを務める投手が初回だけ登板し、2 回以降を別の投手に引き継ぐ方式である。レイズはこの戦術を 2018 年に 55 試合で採用し、オープナー起用試合の防御率は 3.45 と、先発投手を立てた試合 (4.24) を大きく下回った。背景には、先発投手が 3 巡目 (打者と 3 回目の対戦) 以降に被打率が急上昇するというデータがある。MLB 全体の統計では、1 巡目の被打率 .243 に対し、3 巡目は .274 まで上昇する。この「3 巡目問題」を回避するために生まれたのがブルペンデーである。
NPB での運用事例
NPB でブルペンデーが意図的に採用された事例はまだ少ないが、結果的にブルペンデーとなったケースは存在する。先発投手が初回に崩れた試合や、雨天中断後の再開試合で、リリーフ陣が長いイニングを投げ切って勝利した例がある。2022 年のオリックスは、シーズン終盤に先発ローテーションの疲労が蓄積した際、ロングリリーフを軸とした変則的な継投策を採用した。また、日本ハムは 2023 年に若手投手の登板機会を増やす目的で、ショートスターター (3〜4 イニング限定の先発) を試験的に導入した。NPB では先発完投型の投手が依然として高く評価される文化があり、「先発投手が 6 イニング以上投げるのが当然」という意識が根強い。しかし、投手の故障予防と戦力の最適配分という観点から、ブルペンデーの導入を検討する球団は増えている。
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ブルペンデーの戦術的メリットとデメリット
ブルペンデーの最大のメリットは、打者に同じ投手を複数回対戦させないことで被打率を抑えられる点にある。2〜3 イニングずつ投手を交代すれば、打者は常に初見の投手と対峙することになり、打撃成績は大幅に低下する。また、左右の投げ分けを柔軟に行えるため、プラトーンアドバンテージを最大化できる。一方、デメリットも明確である。第一に、リリーフ投手の消耗が激しい。通常 1〜2 イニングの登板を想定しているリリーフ投手に 3 イニング以上を投げさせると、翌日以降のパフォーマンスに影響する。第二に、ブルペンの層が薄いチームでは実行が困難である。第三に、NPB では「先発投手が試合を作る」という文化が根強く、ブルペンデーは投手陣の士気に影響する可能性がある。先発投手のプライドと、チーム全体の勝利のどちらを優先するかという、監督の哲学が問われる局面でもある。
NPB でブルペンデーは定着するか
ブルペンデーが NPB で定着するかどうかは、いくつかの条件にかかっている。まず、ロースター枠の拡大が必要である。現行の一軍 29 人枠では、ブルペンデーを定期的に実施するには投手の頭数が足りない。MLB の 26 人枠 (9 月は 28 人) と比較すると NPB の方が枠は多いが、NPB は中継ぎの連投を避ける傾向が強いため、実質的な運用可能人数は限られる。次に、ファーム (二軍) との入れ替えの柔軟性が求められる。ブルペンデーの翌日に疲労した投手をファームに落とし、フレッシュな投手を昇格させる運用が必要になるが、NPB の登録抹消ルール (再登録まで 10 日間) がこれを制約する。短期決戦のクライマックスシリーズや日本シリーズでは今後も採用される可能性が高いが、レギュラーシーズンでの定期的な運用には制度面の整備が不可欠である。
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