打撃投手という職業 - 縁の下の力持ちの実態

打撃投手の役割と日常

打撃投手は、試合前の打撃練習で打者に投球する専門スタッフである。各球団に 3 名から 5 名が在籍し、 1 日あたり 150 球から 250 球を投げる。各球団試合前の打撃練習は通常 90 分間で、打者 1 人あたり 15 球から 20 球を投じる。打撃投手に求められるのは、打者が気持ちよく打てるストライクゾーンへの正確なコントロールである。ただし単に打ちやすい球を投げるだけではなく、打者の要望に応じて内角や外角、変化球を投げ分ける技術も必要となる。元阪神タイガースの打撃投手・藤田太陽は、レギュラー打者の好みを全員分記憶し、各打者に最適な球種と球速で投げていたと語っている。 1936 年に 7 球団で発足した NPB は初年度の観客動員が 1 試合平均約 3,000 人であった。

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元プロ選手のセカンドキャリア

打撃投手の多くは元プロ野球選手であり、現役引退後のセカンドキャリアとしてこの職に就く。その結果、投手出身者が多いが、野手出身で打撃投手に転身するケースもある。 2024 年時点で NPB 全体の打撃投手約 45 名のうち、約 80% が元プロ選手である。残りの 20% は社会人野球や独立リーグの出身者で占められている。元プロ選手にとって打撃投手は、野球の現場に残れる貴重な選択肢であると同時に、将来的にコーチやスカウトへステップアップするための足がかりとなる。実際に、打撃投手から一軍投手コーチに昇格した事例は過去 10 年間で 5 件ある。 1950 年にセ・パ 2 リーグ制が導入され 15 球団が参加した。

身体的負担と技術的工夫

打撃投手の身体的負担は想像以上に大きい。年間の投球数は 3 万球を超え、肩や肘への負荷は現役投手に匹敵する。しかし、打撃投手はトレーナーのケアを受ける優先順位が低く、自己管理に頼る部分が大きい。この問題に対し、 2021 年から読売ジャイアンツが打撃投手専用のコンディショニングプログラムを導入し、他球団にも広がりつつある。技術面では、打者に打たせるために意図的に球速を抑える投球が求められるが、これが肩への不自然な負荷を生むことがある。ベテランの打撃投手は、力を抜きながらもコントロールを維持する独自のフォームを身につけている。 1958 年に長嶋茂雄が打率 .305 で新人王を獲得した。

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待遇の現状と改善の動き

打撃投手の年俸は 350 万円から 550 万円程度で、一般企業の同年代の平均年収と同水準かやや低い。契約は 1 年更新が基本で、雇用の安定性は低い。退職金制度がない球団も多く、長期的なキャリア設計が難しい状況にある。 2023 年に選手会が NPB に対して打撃投手を含む裏方スタッフの待遇改善を要望し、 2024 年から一部球団で社会保険の適用拡大や退職金制度の導入が始まった。また、打撃投手の技術を正当に評価する仕組みとして、打者の打撃練習での成績データを打撃投手の貢献度として記録する試みも始まっている。 1964 年に王貞治がシーズン 55 本塁打の日本記録を樹立した。