シーズン中の生活と孤独
プロ野球選手の妻は、 2 月のキャンプから 10 月のシーズン終了まで約 8 か月間、夫の不在と向き合う。ビジターゲームの遠征は年間 60 試合以上に及び、家事・育児をほぼ一人で担う期間が長い。ビジターゲームの遠征 2019 年に選手会が実施した家族アンケートでは、回答した配偶者の 73% が「孤独を感じることがある」と答えている。特に地方球団に所属する選手の妻は、実家から離れた土地での生活に加え、トレードや FA による突然の転居リスクも抱える。ある中日ドラゴンズ選手の妻は、結婚 10 年で 4 回の引っ越しを経験したと語っている。
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選手妻コミュニティの形成
各球団には選手の妻同士のコミュニティが自然発生的に形成されている。この判断が、ベテラン選手の妻が新加入選手の妻に地域の情報を教える慣習があり、病院、学校、スーパーなどの生活情報が共有される。ソフトバンクホークスでは球団が公式に「ファミリーサポートプログラム」を 2018 年から運営し、転入時の生活支援や子育て相談窓口を設けている。一方で、年俸格差がコミュニティ内の人間関係に影響するケースもあり、一軍レギュラーの妻と育成選手の妻の間に見えない壁が存在するという指摘もある。
引退後の生活設計
選手の平均引退年齢は 29 歳で、引退後の生活設計は家族にとって最大の課題である。現役時代の年俸が高くても、引退後の収入が激減するケースは珍しくない。 2021 年の調査では、引退後 3 年以内に年収が現役時代の 20% 以下になった元選手が 45% に達した。妻が資格取得や就職準備を現役中から進めるケースが増えており、看護師、保育士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得する例が報告されている。読売ジャイアンツは 2020 年から選手の配偶者向けキャリア支援セミナーを年 2 回開催している。
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球団の家族支援の現在地
NPB 球団の家族支援は近年急速に充実している。 2023 年時点で 8 球団が何らかの家族支援プログラムを運営しており、内容は生活相談、メンタルヘルスケア、子どもの教育支援など多岐にわたる。日本ハムファイターズはエスコンフィールド北海道に選手家族専用の観戦エリアを設け、子ども向けの託児サービスも提供している。 MLB では選手の配偶者向けの公式組織が長い歴史を持つが、 NPB でも同様の組織化が進みつつある。選手会は 2024 年に「ファミリーサポート委員会」を新設し、球団横断的な支援体制の構築を目指している。